修行よもやま

話すと放す

written by: るるべ

来年の春までに、語りの会を開きます!

と公言してしまったからさぁ大変。題材も時期も不確定なのに、大勢の前で勝手に?勢いで?口が動いてしまいました。

先日、ある公演の裏方に入り、数名の語りを聞いたのが直接のきっかけです。その日は、『杜子春』芥川龍之介、『釣る』杉本苑子、『山桜』藤沢周平の三作品が上演され、特に『山桜』の演者表現に圧倒されました。

かけ合いでのお芝居は日常を映し、そのコミュニケーションが面白く読み取れます。一方、ひとりで表現する世界は聞き手の頭の中に映像を投げかけるようなもの。表現者自身が半端な想像力では届けるに叶わず…やりがいがあり個性の出る興味深い分野です。これまで作品には「朗読」という形で関わることが多かったのですが、もうひとつ「読む」ことを打ち破りたい、そう、「語る」ことへの挑戦を新たに始めています。

『山桜』のお話はこうです。

主人公・野江(のえ)は夫の病死後再婚するものの、今の夫は吝嗇で冷ややかな男。ある日、実家の墓参りで婚家を出ていた帰り道、野江はふと三分咲きの山桜に惹きつけられ、ひと枝持ち帰ろうと精一杯背伸びをする。そこへ、

「手折ってしんぜよう」

手塚弥一郎と名乗る男は野江の顔を知っている様子。山桜を手渡され、その名は確か再婚前に会いもせず自ら縁談を断った相手だと思い出す。

「幸せでござろうな」

「はい…」

評判の剣術使いと聞いて乱暴な男を想像し、母子二人のもとへ嫁ぐのを何とはなしに避けた野江だったが、男の暖かい眼差しになぜか包まれるような…。

数ヵ月後、弥一郎は藩を疲弊に至らしめた人物を殺め獄舎に入る。同情派に支えられ切腹か否かの裁断は次の春まで保留に。野江は、夫がその噂を聞いて弥一郎を悪く言うことに強い反感を覚える。これまでの我慢も重なって、夫とは離縁の道へ。

裁断をひと月後に控えた春の初め、ちょうど昨年手折って貰った山桜の季節。野江は、ひとり家を守る弥一郎の母に小枝を贈ろうと勇気を振り絞って手塚家に向かう。玄関には優しく穏やかな眼を持つ女性、弥一郎の母が出迎え、

「いつかあなたが、こうしてこの家を訪ねてみえるのではないかと心待ちにしておりました。さあ、どうぞお上がり下さい」

母の話によると、弥一郎はずっと以前より野江を遠くから気にかけており、縁談も本人の希望で持ちかけたものだった。そして縁なくして時が過ぎようとも、野江の幸せを願って止まない弥一郎の存在がそこにあった。

履物を脱ぎかけた野江の胸に、悔いとも喜びとも感謝とも表せぬ、様々に入り混じった思いが込み上げて涙が溢れ落ちる。

「ここが私の来る家だったのだ。この家が、そうだったのだ。なぜもっと早く気づかなかったのだろう…」

萩坂昇「四季の民話(4)冬
労働教育センター

私がこの作品に惹かれるのは、例えば花ぐもりの情景など、詩のように美しい描写が温もりと共に伝わってくるところ。そして、物語の結末をくっきりと明記せず、受け取る側にその可能性をゆだねているところ。両者ともに朗読だったり語りだったりする表現において、にくらしいほどのエッセンスが詰まっています。「想像」する広さや大きさは、渡す側はもちろん、渡される側もぜひ自由にと願っています。

『山桜』…人とのめぐりあわせは不思議なもの。時間と出来事が複雑に絡み、よい時もあれば悪い時も、近道もあれば回り道もある、思いがけないつながりの連続。誰しもが生活しながら感じている切なさを、暗くならずにすっきりと感じさせてくれる秀作だと思います。語りの会では、野江がいっぱいに背伸びして山桜を取ろうとする様が演者の声から浮かびました。弥一郎の笑顔、春の臭いまでもがほんのりとこちらに迫ってくるように。

ことばと音色。

文字、単語、文章に音声を重ねることは芸術です。

読むと話す。

字ヅラを追うのと内容を持って喋るのでは雲泥の差です。

話すと放す。

「話すことができると、固まった思いも自分から放すことができるよ」と言ってくれた人がいます。これを様々に実感したい。

緊張するよりリラックスすること、考え込むより解き放つことが、なかなかね、難しいんです。

今、萩坂昇氏の民話を読み進めています。『あとかくし雪』、『ごぜの橋』を先日来、細かく辿っています。

そんなこんなで近々にも語りの報告をできる日を願いつつ。

★
(2006/5/29)

RELEVE (るるべ)

るるべうさぎ

レオタードの趣味が悪い?そう?脚はもっとあがるからねっ。

『RELEVE』はフランス語で「高く持ち上げる」の意。ダンス用語では爪先立ちで全身のバランスを保つことなの。この状態から、まわりもの(回転)など多くの振りが生まれるのよ。でも『PLIE(プリエ…かがむ動き)』をしっかりやらねば、『ルルベ』に芯は通りませぬ!身長はもう157cmより高くならないけど、これからも私なりの世界を広げてゆけるかしら、って…そんな名前。

本籍:大分  血液:B  愛読書:TARZAN  座右の銘:いつも心に青空を。
思考の傾向:物事を俳句にして片付ける。なにかと画数を数える。

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