
温泉、温泉…♪
10年前までは毎日が別府温泉硫黄生活。上京当初はユニットバスの、何と心もとなかったことか。しかし慣れとはおそろしいもので、狭い湯船に丸くなって浸かったり、ほとんどをシャワーで済ませたり、ポカポカから遠い毎日も当たり前に過ぎていました。東京暮らしを始めてまだ3年の母が「どこかへ行くなら温泉がいいな」というのは無理もありません。リゾートとかテーマパークとか、特に冬はそんな気分になれない訳です。

お風呂の途中で
見たつらら
猿ケ京ホテルの温泉は客室から少し離れたところに位置しています。季節柄少々肌寒くはありましたが、浴衣姿でそぞろに歩いてホテル内を抜けていく感じがこれまた悪くない。民話の湯となっている浴場の「草の湯」「花の湯」が男女入れ替わりの大浴場です。その先にそれぞれ露天風呂「瑠璃(るり)の湯」「蜜多(みった)の湯」もあります。大浴場の中には3つの湯船が配され、檜の大小は少し温度差があり、岩風呂は比較的ぬるくてお子さんも入れるように浅め。困ったのは、露天に行くのに外の雪道を裸足で歩かねばならないこと。コンタクトレンズなしで全く自由の利かなくなった私は、やむなくこれをあきらめたのでした。お湯は自家源泉の無色透明・弱アルカリ性低張性高温泉で肌あたりは柔らかい。そしてこのホテルの特徴なのでしょう、子供さんも多くて庶民的なムード、リピーターの方が結構いらして去年はどうだったとか水上温泉と比べてどうだとか、猿ケ京は人気の温泉地なんですね。
家族風呂も別に2つあり、予約制で別料金です。ご家族数人ならゆったりとこちらもいいかも。
夕食は食事処にていくつかの時間帯から選びます。部屋食のプランもあるようです。旅館の名前が『豆冨懐石 猿ケ京ホテル』というくらいですから、食には力を入れているはず。雪に見惚れていたけれど、そもそも私が予約した理由のひとつは懐石に惹かれたからでした。メニューはこうです。
美味しそうでしょ?そう、美味しかったの!
火を入れてから自分で「湯葉」を掬い上げるなんて生まれて初めて。竹串でざっと周囲を切り離して一気に引き上げると薄く滑らかな湯葉が串にかかります。3〜4回引き上げに成功しました。そして三珍の中の「すもーく」には栞が添えられていて、
--スモーク・ド・ドーフ。これは板前が桜の木のチップを一日八時間いぶし続けてスモークした豆腐です。その昔、楊貴妃が好んだ美容食とか、修行中の僧が香りに誘われて垣根を飛び越えて修行を中止したとかの逸話の珍味を再現したものです--
薫り豊かな前菜で、変化を遂げた食感の中にも大豆の旨みは活きています。日持ちのするハムのような形で持ち帰ることができればなぁ。「カルパッチョ風」には猿ケ京高原野菜に甘海老、活け鯛、特製酢味噌ドレッシングが和洋バランスよく効いていました。「豆乳しゃぶ」は食べ易い大きさに取り混ぜた有機野菜と牛肉を新鮮な豆乳にくぐらせて胡麻たれへ。「豚と大根煮込み」に添えられた焼き葱と針柚子は風味がすばらしい。「豆乳ぐらたん」には舞茸、帆立貝の他に、焼栗、林檎が入っていてびっくり美味でした。締めの「豆乳アイス」はさっぱり抹茶味…ほんとうにお豆腐三昧の懐石を堪能させて頂きました。

民話と餅つきの蔵
部屋に戻り、一息ついて毎夜8時から行われる民話の語りを聞きに行くことに。時間が近づくにつれ、「味噌蔵」という語りの部屋に宿泊客が集まり始めます。まずはお餅つき。お子さん達が嬉しそうに杵を持ち、よいしょの掛け声が囲炉裏端に響きます。語りの際には旅館の皆さんの手できなこ餅となって配られます。さて、語り部の女将さんがいらっしゃいました。ご挨拶と笛の音と、そして土地の言葉でゆっくりとお話は進みます。
年が明けたところで『初夢』にちなんだお話…。
(以下は私の記憶なのでおおまかな内容です。原文ではありません)
一月二日の夜から三日にかけて見るのが初夢かと。村にいるある男の話。
周囲からは少しばかり頭が弱いとささやかれているこの男。新年そうそう、これまでにない良い初夢を見たと言う。あまりに嬉しそうな男の様子に幾人もが話して聞かせろと問うが、どうしたことか夢の中の出来事は一切しゃべろうとしない。だんだん周りは気になるばかりで、たびたび催促をかけても返事のない男に、とうとう村の者は堪忍袋の緒が切れ、罰としてこの男を鬼が島へと送ってしまう。しかしこの男、それでもいたって幸福そうにしている。鬼もこれには驚き、多少の威嚇にも動ぜずニコニコしている男に夢の中身を再三たずねてみるが、やはりいっさい口にしない。鬼は堪えきれなくなって男に提案する。
鬼『おまえにいいものを三つやるから、その夢の話とやらを教えてくれ。まずは「生き針(いきばり)」…この針を命のなくなったものへチクンと刺せば、たちまちよみがえる魔法の針だ。そして「死に針(しにばり)」…ひと刺しでどんな命も奪い取ることができる。最後に「千里車(せんりぐるま)」…乗ったとたんに千里を駆け抜けてどこへでも行ける車だ。これをみんなお前にくれてやるから、夢の話を聞かせてみろ』
男『よーし分かった。では先にその三つを貰おう。ふむ、実は夢の話というのはな…』
教えようとして男は鬼に「死に針」をチクンと刺した。鬼が力尽きるやいなや、男は「千里車」に飛び乗ってぐんぐん空を駆け抜ける。
たどり着いたのはある広いお屋敷の前、ここは大きな西の庄屋の入り口だ。近所の人々や使用人達が暗い顔をして集まっている。耳を傾けると、
『だんな様も奥様もお気の毒に、あんなに若くて美しいお嬢様が亡くなってしまうなんて』
聞くと病気でひとり娘を亡くしたばかり、庄屋の主人はひどく沈んでいると言う。男は自分が力になれればと申し出て、横たわる娘に「生き針」をチクンと刺した。娘はみるみる生き返り、主人はたいそうな治療ができる先生だと男に惚れ込み、このまま娘の婿になってくれと頼む。
『他にも困っている人がいて、自分はまだ旅をしなければならない。申し出は有難いが戻って来るまで待ってはくれまいか』
男はまた「千里車」に乗って発ってしまう。
男が向かったのはもうひとつの大きな屋敷・東の庄屋。ここでも多くの民が涙を流している。なんと娘が急な病気で命を落としたという。男は「生き針」を取り出してチクンと刺した。元気に起き上がる娘。こちらの主人も大喜びして、このまま屋敷にとどまれと願う。
西の庄屋の話をし、後に東の庄屋の事情も向こうに伝え、男はその後、一年の半分ずつを西・東それぞれの庄屋の婿として過ごし、豊かで自由な一生を手に入れた。
鬼から三つを受取り、西と東の庄屋で幸運に出逢うこと。それは男が一月二日に床について見た初夢のままだったそうな。大切な夢はむやみやたらにペラペラしゃべらないように。
語りは地元の教育にも熱心に携わっていらっしゃる、猿ケ京ホテル・女将の持谷靖子さん。字づらを追っている風はなく、実に内容を素朴にお話下さいました。ただ朴訥としているのではなく軽妙さもあって、楽しくお話が伺える暖かい場所です。
民話の時間の後、語り継ぐこと、についてふと思いが巡りました。
いま世界中で置き去りにされてはいないかと思うと怖いなって。

「いたちの雪かき」
一冊購入しました
本でWEBで噂で…、情報は口伝えでなくても残ってはいく。そんな何となく知っていたり聞きかじった程度の知識?が自分の中でも見え隠れするのです。臨場感をもって興味深く聞き耳を立てた時、いくつかの言葉がしっかり刻まれ、想像した映像は焼きつきます。「おはなし」に限らず、伝えたいこと、伝えなくてはならないことは人間が心と体でつないでいかなくちゃって思う。例えばいつどこで戦争がおこっていても、命が無残に破かれても、仕方ないとしか感じなくなる人ばかりになってしまったら、もう身動きがとれない。
そして話すことの隣には - 聞くこと - があります。本当に聞こうとしているの?聞こえているの?
時々自分にこそ「聞いて」みようと、お話をじっくり聞いて色々思った夜でした。
語りの最後には、お話を最後まで聞いたよい子のみんなに、女将さんが絵本「てじろのさる」をプレゼントしていました。手書きで似顔絵と名前をその場で入れての贈り物です。子供達は恥らいながらも嬉しそう。この本は、白い手の猿が人間の赤ちゃんの大病を治したという猿ケ京の伝説を持谷さんが絵本として出版されたもの。お父さんやお母さんがこの本を読んでくれたら、子供達は家族での温泉旅行のあたたかさと、猿の不思議なお話とにふんわり身を委ねることができるでしょう。
家族といえば、うちの母は歌うことが何よりの幸せ。今夜もひとりでカラオケのあるバーへ行ってしまいました(旅行に行くといつもこうです)。私はぼんやりと部屋で湯葉のお菓子をかじりながら(まだ食べるかっ)、静かな夜を満喫しました。
…つづく。

RELEVE (るるべ) |
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レオタードの趣味が悪い?そう?脚はもっとあがるからねっ。 『RELEVE』はフランス語で「高く持ち上げる」の意。ダンス用語では爪先立ちで全身のバランスを保つことなの。この状態から、まわりもの(回転)など多くの振りが生まれるのよ。でも『PLIE(プリエ…かがむ動き)』をしっかりやらねば、『ルルベ』に芯は通りませぬ!身長はもう157cmより高くならないけど、これからも私なりの世界を広げてゆけるかしら、って…そんな名前。 本籍:大分 血液:B 愛読書:TARZAN 座右の銘:いつも心に青空を。 | |