修行よもやま

イメージは魔法よりも

written by: るるべ

ことばに頼り過ぎて全てを焦ってしまう。野暮だなと思うのです。

最近のこと。朗読会なるものをすることになり、いくつか候補を出して詰めていました。しかし諸事情で仲間と一緒にひとつの作品を作る流れに変更。用意していた個人用は固めの題材だったせいもあり、わたしってばあたふた。確かにおとぎばなしも民話もしっかり読めばすばらしい。演出が加わればお客様も飽きはしないかも知れない。でも、付け焼刃で学芸会や文化祭みたいにパッとやってパッと終わるのは、大人の聞き手や演じ手にとって興ざめしてしまうでしょう?

ひとりの共演者が、古本屋の脚立に座り(お店の人に訝し気な顔をされて)そのまま読みきって購入したのが

『まほうつかいのむすめ』 作:アントニア・バーバー 訳:中川千尋 絵:エロール・ル・カイン

この作品を3人でやってみようということになりました。本を手にしてまず目に飛び込んでくるのは、静かに訴えかけるその「絵」でしょう。どこかで見たことのある挿絵…すっかり中途半端になった記憶をたどると、そうです、『おどる12人のおひめさま(グリム童話)』の可憐な絵も彼の作品でした。ゆったり流れる神秘的なタッチ、光と色を巧みに織り込んだ細かな描写、「美しい」だけでなく動植物が生き生きとこちらに流れ込んできます。子供の頃に出会った感覚を取り戻すべく、最近、画集を求めました。ここのところ少々疲れると、お風呂あがりにストレッチしながらこの本を開くことが多い(ってどんな格好?)。

すると欲が出ます。邦訳されているものだけでも揃えたいなぁなんて。そこまではいかなくても、友達の子供にプレゼントしたり読み聞かせしたり(いい迷惑?)するのには、とてもいい作品群です。中でも彼自身がお話も絵も担当している『アーサー王の剣』、『キャベツ姫』、『白猫』は独創的です。そしてスタンダードに『シンデレラ』、『美女と野獣』も。某エンターテイメント企業さんのアニメもよいけれど、エロール・ル・カイン氏の絵本のページをめくりながら子供達と対話すれば、イメージの魔術師と言われた彼のように、子供の小さな身体中にも豊かな想像が駆け巡るかも知れません。

47歳で亡くなったエロール・ル・カイン氏。膨大、とは言いがたいその美しく魅惑的な絵は、えほんミュージアム清里(2F特別展示室)で実際に数点見ることができます。いつか足をのばしたいですね。

『まほうつかいのむすめ』は、もちろん絵だけでなくストーリーも魅力的。アントニア・バーバー氏がベトナムから迎えた幼女の為に書かれたと言われています。あらすじはこうです。

「まほうつかいのむすめ」
(ほるぷ出版)

娘は父と二人暮し。魔法使いの父はあらゆる術を取得し何不自由ない毎日を続け、娘をなぜか「むすめ」とだけ呼びます。世間から遠ざかっていることさえ分からぬ娘ですが、父が一心不乱に本を読みふけり、次なる願い・不老不死を叶える研究に没頭するのを目の当たりにして、自分も本を読みたいと申し出ます。魔法使いは仕方なく娘に本を与え、自分は術の研究にいっそうのめり込んでゆくのです。一方、娘はその間に本を通して広い世界に触れ、溢れんばかりの希望を持ち、自分をもっと知りたくなります。父に尋ねても「おまえはバラだったのだ、魚だったのだ、小鹿だったのだ、鳥だったのだ…」と名前どころか存在さえ確かにしません。娘は魔法でそれらに成り代わりながら自らに問いますが、真の心で頷ける姿はなく、ただ父に翻弄されていることに気づき、羽ばたくことを決断します。小鳥となった娘はおおきな自然の力に阻まれながら、自分は何者なのか、そして母親という存在を信じて飛び続けます。魔法がとけて力つきた時、運命は再会へと逆転。幼い頃魔法使いにさらわれた娘の名は「チ・フィ・エン(小鳥)」、彼女は物質的に豊かな魔法使いとの生活に戻ろうとはせず、ほんとうの自分を大切に家族と暮らしてゆくのです。

冷たく寒い土地の白、バラの赤、湖の青、森の緑、娘の黒髪、ともしびの橙…。このお話を読み進めていくと、あらゆる色彩が頭の上下左右から降ったり舞い上がったりする感覚にとらわれます。色だけではなく距離感も同様で、娘と魔法使い、母親、とりまく自然との関係が無理なく浮かんできます。俯瞰からの描写も、本を手にした人との空間を遠ざけたり融合させたり。

エロール・ル・カイン画集
「イメージの魔術師」(ほるぷ出版)

魔術師と言われたエロール・ル・カイン氏ですが、アントニア・バーバー氏も翻訳の中川千尋さんも、自分でイメージしたものを表現する道中に、読む人に自由にイメージさせる寄り道を広く作ることができる…3人の制作者は純粋なイメージ操者です。繰り返し読むうちに実感しました。

わたしは「自分の居場所」というものを探しながら生きています。心も体も安住の地などないような気さえします。チ・フィ・エンが動かずにはいられなかった想い、時に不可能を飛び越えて前へ出ようとする意気込み。未熟ながら共感できることが多く、もう少し年齢を重ねたら、また新しい発見があるのかしらって。ことばで全てを伝えようとするのは野暮だけど、経験や直感で深く感じ取ることはできるかも知れない。

このお話は皆さんの感性で、それぞれに読み解いてゆかれることと思います。

★
(2005/12/8)

RELEVE (るるべ)

るるべうさぎ

レオタードの趣味が悪い?そう?脚はもっとあがるからねっ。

『RELEVE』はフランス語で「高く持ち上げる」の意。ダンス用語では爪先立ちで全身のバランスを保つことなの。この状態から、まわりもの(回転)など多くの振りが生まれるのよ。でも『PLIE(プリエ…かがむ動き)』をしっかりやらねば、『ルルベ』に芯は通りませぬ!身長はもう157cmより高くならないけど、これからも私なりの世界を広げてゆけるかしら、って…そんな名前。

本籍:大分  血液:B  愛読書:TARZAN  座右の銘:いつも心に青空を。
思考の傾向:物事を俳句にして片付ける。なにかと画数を数える。

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