
「日焼けしたんじゃない?」
日本ではかなりブロックを心がけた紫外線なのに、中国へ着くや否や連日空をぼーっと見上げ、すっかりひと夏ぶん以上のコンガリを身につけてしまいました。帰国時の杭州蕭山空港では「帰りたくない」と本気で思った今回の渡航。挫折しながらも「謝謝(シィエシィエ)」で全てを乗り切ろうとした無謀な旅。その顛末を少々記してみます。
2006年5月、恒例の三茶パブリックシアターで我がダンスチーム〔Que,sera,sera ケセラセラ〕は新作を出し、これでしばらく舞台はないと思っていた同月下旬、師匠からFAXが届きました。
「中国で踊ってみないかって話があるの…」
見ると、杭州(Hangzhou)の催しや学校などについて書かれています。どうも中国・四国ってことじゃないみたい。
文化交流の一環として、師匠と繋がりのあるバレエ団と我がチームが合同となり、博覧会内のステージで公演をしてはどうか?というお誘いでした。渡航前に杭州市旅游委員会の日本担当の方ともお会いしまして、この組織の他、ANA、世界レジャー博覧会組織委員会、ビジット・ジャパン・キャンペーン事務局に協力・後援される催しで、舞台の後はメンバーで杭州を見る時間も取られたスケジュールです。
日中文化交流団って…、私達が?ふふふ。いきなりマンザラでもないわね。
直後レッスンスタジオで、
るるべ 「中国どうする?ご返事しなくちゃね」
ケセラ1 「もう休み取っちゃった」
ケセラ2 「私も上司に言ったわよ」
ケセラ3 「この機会に仕事、辞めちゃおっかなー」
おいおい、みんな即決なのね。5月に発表した作品を再演したくもあり、長く一緒に稽古してきたメンバーといつか旅に出たいとも考えていて、今回は踊る場も提供されるんだもの。よし、行ってみよう。
それぞれに仕事を抱えるメンバーがどう決断するか師匠の危惧はどこへやら、あれよあれよと12人のダンサー達が海を渡ることになりました。再演2曲と新作1曲、バレエ団と共同のフィナーレ1曲を持って行くことに。香盤が出たら驚きの全曲出演で、嬉しいやらプレッシャーやらのリハーサルが始まり、真夏のリハは痩せる思い(思い…だけね)。時間と共に掴めたと思ったら不確かになり、表現とは何ぞやと悩み悩み気づけば、季節は秋へと進んでいたのです。
その日のスーツケースはやけに重く感じ、ん?衣装が4着も入ってりゃ当然重いって?そうなんですけど、いつも通りやるべきことの他、海外公演は段取れていない未知の世界が待ち受けていて、わくわくが一杯詰まっている気がしました。ウキウキして心も荷物も軽い!っていうのとはちょっと違う感じ。ANA・NH929便はその重みに耐えながら、浙江省杭州市へ向けぶーんと成田を離陸。行ってきま〜す!

往きの機内食
機内でのメインイベントは、そう、食事!ANAの機内食は味も量も文句なしでした。この日は蟹ごはんに紅鮭や煮物、季節の麺(2種の冷たい麺)、スモ−クサーモンに卵とパスタのサラダ、チョコビスケットにミックスナッツ、飲み物はビールやワイン、ソフトドリンクから選べます。メニューそれぞれの温冷もしっかりしていたし、食後もコーヒー・紅茶がきちんと頂ける。女性ばかりで中央シートに3人並んでいたのですが、まだ踊ってもいないのに揃って完食。この後、更に食に生きる毎日を送るのだけれど、知ってか知らずかもはや満腹シスターズ。私は家を出て西武線に乗ってからずっと喋り続けていたのでこの辺でひと休みです。全シート完備のモニターで、幾度目かの「ダヴィンチ・コード」をうつろに眺めていたら、ほどなくANA機は蕭山空港へすべり込みました。
おっ、蒸し暑いぞ、杭州。

第一世界大酒店フロント
上着を脱ぎつつ時差分1時間時計を戻して、通訳ガイドの方と合流。姚(ちょう)さんと葉(よう)さんは日本国民もなかなか敵わぬ流暢な日本語を操り、テキパキと挙動不審ダンサー陣を率いて下さいます。意気揚々とバスに乗り込んだら、あれ、車内も暑い。おかしいと思っていたら、バスが動かず代わりの車両へぞろぞろ移動することに。こんなはずでは…と姚さん葉さんが恐縮、みんなは漢字しかない看板に目がクルクル、必要分をここで人民元にしてくれて、まずはホテルへ向かいました。チェックインと公演会場の下見です。連泊で『第一世界大酒店』というホテルに泊まります。ここはレジャー博覧会敷地内の観光用施設で、大変新しく美しい熱帯風デザインのホテルでした。当ホテルの中庭風になっている広場「熱帯雨林広場ステージ」で、翌日2回公演が予定されています。

ひろーいお部屋
ますはそれぞれの部屋へ荷物を運びます。ポーターさんにお願いするとチップは10元くらい。お察しだと思いますが、この日本円にして150円ばかりことを、我等は必死にスーツケースを個々に部屋まで引きずる訳です。ああ重かった、でも着いた。最新式のカードキー(カードは非接触、ドアには液晶モニターがありメッセージ出現)で部屋に入ると、うわぁ、ひろーーい!セミダブルサイズのベッドの向こうには、10人以上が十分くつろげるリビングスペース。水周りもトイレ、洗面台の脇にゆったりバスタブ、別に透明ガラスのシャワールームも。バスタブとベッドが1枚のロールスクリーンで仕切られているのには困惑しましたが、とにかくリゾート気分満載の豪華さなのです。
中国の水はかなりの硬水で日本人はそのままの飲用を控えた方が無難。部屋に置かれている人数分のミネラルウォーターは助かります。インフォメーションは全て中国語ですが英語も添えられていて何とかなる。ガウン、スリッパ、洗面道具も完備されていました。ただ洗髪時にシャンプーとリンスを分けて使うことは一般的ではないらしく、このホテルでもリンスインシャンプーで、故に脇へ置かれていたボディソープをリンスかと思い込んでいた私はその晩、泡で危うく溺れそうな目に遭いました。

ここは熱帯なのかっ?
ひと息ついたら明日の公演会場の下見です。ガラス張りの屋根から採光できる広大なホテルの中庭ステージ。池もあるし彫像のワニや象もいる。熱帯雨林風の全体の植栽がオリエンタルな雰囲気を醸し出しています。それにしてもトンカントンカンと工事の人の行き来が激しい。なぜか花道のようなものも作っている。時間ごとにイベントが多いのかしら。控え室など不安点も残しながら、公演については又詰めることとして、一旦皆で外出することにしました。
がここでちょっとびっくり。一度部屋を出たら、次にカードで入れなくなって、通路で客室係とおぼしき男性に説明するも中国語オンリーの返答。同室のまやちゃんと私るるべは固まってしまいました。「Just moment」とその場を男性が去ったのでじっとしていたら、待てども待てども誰も来やしない。仕方なくフロントでキーチェックをして貰い再び部屋へ。しかし何度かざしてもまだ開かない。再度人を呼んで英語が話せるホテルマンがようやく登場するも、互いにどっこいどっこいの英語力だからか、どうもうまく通じない。システム異常で修理に30分くらい要することを何とか聞き出し、ひとまずそのまま出かけることになったのでした。冷や汗〜。

海老と青豆の炒め物
この日は外で食事。「大宋坊」というレストランです。観光客の多いお店のようでした。箸が重くて先が尖っていない、持ちにくいぞ。初めての現地での食事は噂通り薄味で、素材の味をいかした中華。野菜たっぷりで量もたっぷり。セロリや川魚を使うのが日本と異なるところかな。スープはトマト入りのさっぱり。私が気に入ったのは鳥を揚げて黒酢あんで絡めたものと、写真の海老と青豆のあっさり塩炒め。梅干菓子(写真左後ろ)や紹興酒を燗にするポットなど、観光客向けに販売されているお土産が飛ぶように売れていました。さてデザートはアンニン豆腐かマンゴープリンかっ!どーんと登場したのはスライスされたスイカの山。そう、前者2つもゴマ団子も桃まんじゅうも、中国でスイーツとして食後にはまず出ないそうです。私達のスイカな毎日の序章でした。

漢方の本場!
食後は散歩がてら河坊街へ。杭州の代表的な歴史文化街で、様々な個人商店が整然と並んでいます。露天風の手作り雑貨のお店や屋台風の串焼きやお菓子を売るお店など、この地域の文化を肌で感じることができる大きなストリートです。あいにくの天気ではありましたが、お茶、シルク、翡翠、朝鮮人参、月餅…、様々に中国へ来ていることを実感します。私のチームには日本在住で中国籍のせっちゃんという大変可愛い女性がいて、いざとなれば彼女があらゆる解説や通訳をこなしてくれるのでもう大助かり。甘えてあまり予習してこなかっただけに、見るもの触るもの全てに珍しさを感じて河坊街を歩きました。
さてホテルに戻ると、再度会場の下見へ。なになに?現地に入ってから判明?予定していた熱帯雨林ステージでは明日別のイベントが入っている?ファッションショーを夕方行うので、私達が会場変更?

リビングもひろーい
工事していたのはやっぱり花道だったのね…って納得してる場合じゃないか。杭州市旅游委員会とホテル側との行き違いのようで、信じられないけれど仕方ない、私達は熱帯雨林広場では踊れない。急遽、古堡広場というホテルの外のパーク内の野外ステージ公演を基本とし、雨天の場合は別エリアの劇場に移る策で決定しました。その後、皆で古堡広場を下見に行き広さや出入りを確認、ガイドさんの上司の男性が責任者としていらっしゃって控え室などを検証しました。が、何ごとも「おおよそ」な感じ…いえ失礼、前向き?なのかな。私の師匠に、「センセイ、何とかなりますよー、晴れますよー、あははー」と舞台裏にあったイベント用の太鼓をポポン!と叩いては満面の笑顔。ああそうですか、それは明日が楽しみです、はい。
心配し過ぎるのも良くないわね、部屋に戻りましょう。
ようやく落ち着けそうで、私は洗面台へ。テロ未遂発覚で手荷物液体禁止が非常に面倒だった今回の渡航。スーツケースの中で揺られ続けたイソジンでガラガラやっていたら突然部屋から大きな声が。
「きゃあああーー」
まやちゃん、どどど、どうしたのっ?
つづく。

RELEVE (るるべ) |
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レオタードの趣味が悪い?そう?脚はもっとあがるからねっ。 『RELEVE』はフランス語で「高く持ち上げる」の意。ダンス用語では爪先立ちで全身のバランスを保つことなの。この状態から、まわりもの(回転)など多くの振りが生まれるのよ。でも『PLIE(プリエ…かがむ動き)』をしっかりやらねば、『ルルベ』に芯は通りませぬ!身長はもう157cmより高くならないけど、これからも私なりの世界を広げてゆけるかしら、って…そんな名前。 本籍:大分 血液:B 愛読書:TARZAN 座右の銘:いつも心に青空を。 | |