「今夜からぺルセウス流星群が来るんだって」。
そう友人はうれしそうにメールをくれた。
夏の空を彩る大流星群である。都会では見るコトガデキルノカナ?そう思いながらも、星空にさほど興味のない私は、次の日に向け、そうそうに休みをとってしまった。
明日は埼玉県のある小都市へ、建築家を訪ねていく。
その街は、材木の産地としても知られ、古民家や蔵が点在する雰囲気のいい場所だということは聞いていた。しかし、駅の名前を聞いても自分がかつて訪れたことのある場所だったということは、全く思い出せずにいた。
翌日の午後、その駅に着いた。
夏も後半にさしかかり、まるで夏の終わりを告げているかのようにせわしなく鳴くセミの声。東京から電車で1時間半という緑の多いその街も、都心とはあまり変わらぬ暑さでがっかりした。しかしながら、約束の時間より早くついた私は、持ち前の好奇心で街を散策してみることに決めた。
どこにでもある小都市の風景のように見える。しかし、ぐんぐん進むうちに、私の身体は確実にある場所へ続く道をたどっていた。この石畳、そして商店街。
この通りにはおぼえがある――。
そうだ。私はかつてこの道を歩いたことがあった。
今から8年前、短大を卒業して、就職もせずバイト生活をしていた私は,いつも同じ仲間とつるんで遊んでばかりいた。
そのうちの一人は、あるミュージシャンの追っかけから彼が専属する事務所に入ることになった幸運の持ち主で、彼女の仲間がこの街で喫茶店を経営していると聞き、一緒についていくことになったのだ。その喫茶店は、その街が明治時代から使っていた蔵を改造して建てたもので、ノスタルジックな雰囲気に包まれていた。そして、食器にはすべて流れ星のマークがついていた。
当時は古いものを再生して使うという発想の最先端で、東京でもあまりお目にかかることができない蔵の雰囲気にすっかり夢中だった私は、よく彼女にくっついてその喫茶店にお邪魔していたのだ。
それなのに、なんということだろう。たった8年前の出来事なのに、この街のことも、この流星の喫茶店のこともすっかり忘れてしまっていた。多分、その後のあまりの忙殺に、この街を記憶に留める余裕がなかったのかもしれない。
記憶が教えてくれた道の終わりには、あの喫茶店が待っていた。おそるおそる扉を開けてみる。あの席、あのスタンド。食器には流れ星のマークがついている。全てが当時のままであった。
「なりたいモノがあるんです」。定職のあてもない私の境遇を心配したこの店のオーナーに、かつて堂々とこう言い切った事がある。

当時は知識もコネもないのに、なぜそう言い切れたのか。今だったら恥ずかしくなるような台詞。それからたくさんの出来事があったが、どうにかその仕事をこなせるようになったのも不思議な話だ。そしてその仕事のために、再びこの街を訪れている――。人生には、再確認という意味も含めて、過去を振り返る瞬間があるのかもしれない。もう一度気を引き締めるという意味においても。
「私です、憶えていますか?」
お金を受け取るオーナーにそう言おうとしたが、違う言葉が出てしまった。
今流れているこの曲、何ですか?
「carla bruni っていうのよ」。
そう言ってCDを見せてくれた。
銀河を流れる流星群――。この街で見た流れ星は私に新たなエネルギーを与えてくれることだろう。そして、次に再会する時にはちゃんと名前を告げようと心に決め、再び扉を閉めた。
糸巻きナット〜 |
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「納豆は地球を救う!」をモットーに、全世界を駆け巡り、納豆の良さを人類に知ってもらうべく、密かに活動中。もっか“梅干し、ミソスープ、トーフ”から徐々に各国一般人を洗脳。将来の夢は“クイーンエリザベス”号で世界一周をすること。 | |